赤十字のあらまし 【赤十字運動月間 5月1日~5月31日】

① 赤十字の誕生

1859年6月24日、北イタリアのソルフェリーノという村を中心に、イタリア統一の激しい戦争が展開されましたが、旅行者としてそこを通りかかったスイス人、アンリー・デュナンは、実際に戦争の悲惨なありさまを目撃しました。

彼は負傷兵の苦しみを見過ごすことができず、みずから彼らを看護したのですが、ジュネーブに帰ったデュナンは、戦争犠牲者の悲惨なようすを述べるとともに、国際的にも連携のある民間救護団体設置の必要性を強調した「ソルフェリーノの思い出」という本を出版し、全世界の人々に訴えました。

ジュナンは、その中で2つのことを提案しました。

1)戦場で負傷した兵士を敵味方の区別なく救護するために、各国で民間の救護団体を組織しておくこと。

2)その団体が戦場で安全に救護活動が行えるように、国際的な取り決めを結んでおくこと。

この考えは、ヨーロッパ各地で大きな反響を呼び、1863年2月、ジュナンの構想を具体化するため、公衆福祉協会の会員が集合して会議を行いました。
その日が今日の赤十字の誕生となったわけです。

② 日本の赤十字は、いつ・どのようにしてできたのか

国際赤十字が戦争をきっかけにして生まれたように、日本の赤十字も、1877年(明治10年)西南の役をきっかけにして生まれました。

西南戦争では、戦況とともに、多数の死傷者の惨状が政府へ刻々と伝えられ、当時元老院議官であった佐野常民(さのつねたみ)は、1867年と1873年の2回、ヨーロッパに渡って、向こうの赤十字をつぶさに研究してきた人ですが、この人が西南の役の時に、同志の大給恒(おぎゅうゆずる)と協力し合って、両軍の負傷者救護のために1877年博愛社をつくり、この博愛社はその後1887年(明治20年)日本赤十字社と改称し、今日に至っています。

③ 赤十字の趣旨・目的

赤十字の目標は「戦場において敵味方の区別なく負傷者を救護する」ということです。

これは赤十字の基本目標であると同時に、原則でもあります。特にこの原則の大切な点は、敵味方の区別なくということです。この赤十字精神の中に脈々として流れているのが、「博愛」「人道」です。「博愛」「人道」はいついかなる場合でも、人間の味方として、人間を苦痛や死から守り、災害や病苦はもちろん、敵対意識の最も激しい戦場においてすら、敵も味方もなく、傷病兵は同じ人間として取り扱わなければならないとする、人間のもち得る最高の善心です。

④ 赤十字の組織

赤十字社連盟を通じて180か国につながる赤十字社は一国一社の建前で組織されています。
日本赤十字社は本社を東京におき、各都道府県にそれぞれ支部をおいています。長崎県支部は市・郡に地区、町村に分区をおいて活動を行っております。

⑤ 赤十字が掲げる基本原則

<人 道>

赤十字はあらゆる状況下において、生命と健康を守り、人間の尊重を確保する。

<公 平>

赤十字は国籍、人種、宗教、社会的地位または政治上の意見によるいかなる差別をもしない。

<中 立>

すべての人からいつも信頼を受けるために、いかなる場合にも、政治的、人種的、宗教的または思想的性格の紛争には参加しない。

<独 立>

赤十字は独立である。常に赤十字の諸原則に従って行動できるようその自主性を保たなければならない。

<奉 仕>

赤十字は利益を求めない奉仕的救護組織である。

<単 一>

いかなる国にもただ一つの赤十字社しかあり得ない。

<世界性>

赤十字は世界的機構であり、その中においてすべての赤十字社は同等の権利を持ち、相互援助の義務を持つ。

⑥ 日本赤十字社の実施している事業

赤十字は、人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性の7つの基本原則のもとに次の事業を行っています。

1.国際活動

世界の各地で頻繁に発生する民族紛争や、地震・風水害・干ばつなどの自然災害等に対し、医療協力や資金援助を行うとともに、人員を派遣し、救援、開発等の国際協力を実施しております。

2.災害救助活動

災害の被災者を救護する仕事は、赤十字社のもっとも重要な事業の一つであり、災害が発生した場合の迅速な対応ができる体制を整備しています。

3.医療活動

赤十字の病院は、医療法により公的医療機関に指定され、一般医療のほか救急医療等さまざまな高度医療、老人医療など地域社会の要請に応えてその使命達成に努力しています。

4.看護師養成

赤十字看護師の養成は、国内はもちろんのこと国際的な看護活動ができる優れた格調の高い看護師をめざしております。

5.血液事業

今日、輸血用血液のすべては献血で確保されていますが、医学の進歩につれて、輸血の方法も全血輸血から成分輸血へ大きく変化し、血漿から作る血漿分画製剤の開発など研究がすすめられています。

6.救急法・家庭看護法等の講習

思わぬ災害や事故にあった人、急病人の応急処置の方法あるいは家庭での病人の看護の仕方などに必要な知識と技術を普及するため「救急法」「水上安全法」「家庭看護法」の講習会を広く実施しています。

7.赤十字奉仕団活動

赤十字奉仕団は、赤十字の人道的諸活動を実践しようとする人々が集まって結成されたボランティア組織です。

8.青少年赤十字活動

三つの実践目標を掲げて精力的に行われています。

(1)生命と健康を大切にする。(健康・安全)

(2)人間として社会のため、人のためにつくす責任を自覚し、実行する(奉仕)

(3)広く世界の青少年を知り、なかよく助けあう精神を養う(国際理解・親善)

9.社会福祉事業

日本赤十字社には、全国各地に児童福祉施設(乳児院・保育所・養護施設・虚弱児施設・股体不自由児施設・重病心身障害施設)、老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、身体障害者更生援護施設(身体障害者療護施設・視覚障害者情報提供施設・補装具製作施設)があります。日本赤十字社は、これらの施設の運営を通して援護を必要とする地域社会の人々の福祉の向上に努めています。

⑦ 赤十字の財源はどこから得られるのか

赤十字連盟の指導原理13か条の第10に「各国赤十字社が財源上の支援をうくべき財源は、社員の拠出金及び個人・団体からの特志寄付であるべきである」と明記されており、日本赤十字社法第4条に「日本赤十字社は、社員をもって組織する」と定められています。
人種・宗教・政治・お国柄などを超越した完全な中立の立場で公平かつ平等に事業を行うことを使命とする赤十字は、真にこれを理解し、協賛する社員の拠出金その他寄付金によってまかなわれています。

⑧ 赤十字を支えているものは何か

赤十字は社費を拠出してその事業を支援する社員と、自分の余裕の時間と労力と能力を人のため社会のために奉仕する奉仕者によって支えられています。このいずれが欠けても赤十字は成り立ちません。

⑨ 社員制度と社費について

日本赤十字社は一定の社費を納める社員によって組織された特殊法人です。
社員には個人の社員と法人の社員とがあります。法人の社員とは、会社や団体として赤十字の事業に協力し社費を納めるものをいいます。
日本赤十字社の主な財源は、これらの社員によって納められる社費と、このほかに事業資金としてよせられる寄付金とがあり、これらを総称して社資と呼んでいます。

日本赤十字社の社員は社法で次のようなことが決められています。

社員の社費は年額500円以上となっております。従って500円未満の協力は寄付金扱いとして取り扱います。社員には一般社員と特別社員の二種類があります。多額の社費を納めたり、社業に功労のあった社員に対しては、特別社員の称号と特別社員バッジが贈られたり、有功章などが授与されます。

 

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